はじめまして
「田内しょうこ」と申します。

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働くおうちの基本料理を追及して
『時短料理のきほん』が生まれました
 こちらのコーナーで、時短料理のためのいろいろな工夫やレシピをご紹介していきます。よろしくお願いいたします!
『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)という本を2007年に出版し、その後フリーの料理家になって6年。その間、いろいろな本の仕事や雑誌・ウェブの仕事をしながら、ずっと働くおうちの料理を追求してきました。どうすれば、要領よく働きながら料理をすることができるのか。子どもに美味しく食べさせ、忙しい毎日でも罪悪感少なく楽しく過ごせるのか。そのテーマのまとめとして仕上げたのが『時短料理のきほん』(草思社)です。刊行以来、働くお母さんや育休から復帰する若いお母さん向けのワークショップ、そろそろ介護でお忙しくなってこられた先輩方向け教室、お父さん方や料理好きの男性まで含めた企業でのミニセミナーまで、時短料理とそれが生む心のゆとりについて、いろいろな場でお話しさせて頂いています。

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「帰宅して15分で3品」
働くお母さんの切実な気持ち
 働くお母さんたちからのリクエストは、5~6年前の「30分で3~4品作れればいいかな」というものから、この2~3年で「帰宅して15分で3品」というところまで一気に短くなってきました。「自分の楽しみのために仕事を続けたい」というそれまでの雰囲気から、これからの少子社会を支えるためには「母親でも働かなくちゃいけない」というほんの少しの義務感を伴い始めたのかな、ということを、接している働くお母さんたちからうっすらとながら感じるようになりました。
働くお母さんたちは「もっと豊かなごはんを作らなくちゃ」「早起きして家事をこなさなくちゃ」と、頑張り屋さんばかりです。頑張らなくちゃいけない、でも会社では出産前ほどには仕事がこなせなくて肩身が狭い、イクメンが増えてきたとはいえまだまだ頼れないお父さんが多い、という状況のなかで、お母さんひとりが頑張ろうとして、疲れ切っている方が多くなってきたのではないかな、と感じ始めています。
わたしの考える時短料理は
“一生もののスキル”です
 わたし自身がワーキングマザーとして「なんとか手作りのごはんを食べさせたい」と、週末や朝に作り置きや下準備をする工夫をはじめ、そうすることで「子どものために何もできていない」という罪悪感からほんの少し解放されて気持ちがラクになった、という体験をまとめた『働くおうちの親子ごはん』を出してから7年。いろいろな共感のお声を頂いたり、現場のお母さんの声に触れたりするうちに、わたし自身が家事や料理でよりこなれてきたこともあり「そんなに頑張らなくても、料理の仕組みを理解すれば要領よく作業をこなしていけるよ、「すきま時間」を使ってほんの少しの下ごしらえをしたり、料理の段取りをイメージしてみるだけでも、料理はとてもラクになるよ」ということをお伝えできれば、と思うようになりました。そして始めた時短料理ワークショップ/教室ですが、実は時短料理のスキームは、家庭内のワークシェアにもとても有効だと気づきました。
わたしの考える時短料理は、インスタント品を使ったり、電子レンジのすご技を使ったりするものではなく、基本的な料理の手順と概念を身につけて、どなたでもおうちの味で応用していける一生もののスキルです。昔からお母さん方が工夫してこられた料理の手順や下ごしらえを、いまの生活に合わせて必要なものを選び直す手段だと考えて頂けるとわかりやすいかと思います。それは、自分はなにを食べ、どう時間を使って暮らしたいかを考え直すきっかけでもあります。
男性にも理解された!
「ルール作り・可視化・マニュアル化」
 時短料理は、ダイバーシティな生活力のとっかかりとして料理手順や時間の流れをチャートで表現したところ、男性からの反響がとても大きかったのです。これなら理解ができる、と。よほど料理好きの男性でなければ、台所仕事に手を出したり手伝ったりするのは難しい、とよく聞きます。しかしこれから、みんなで働いて社会の仕事をシェアしていくためには、家庭内の仕事もうまくシェアしていかないと立ち行かない。これまでのように外で働く人、家で家事をする人、というシンプルな分類ができなくなる以上、家事は家族みんなで共有するものになっていくとよいなと思います。
そのためには「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」という仕事の基本が必要になってきます。あとはマニュアル化。誰が引き継いでも、いまなにが行われているのかわかる状態にする。それぞれのおうちなりのものでよいので、明確なルールを作り、それを可視化すれば、みんなでシェアしやすくなると思うのです。
それは男性に限らず、子どもも同じ。「全体の流れのこの部分を担ってもらいます」ということが明確になれば、取り組みやすいしやる気も出るのではないでしょうか。
料理は、ダイバーシティ時代の
基礎生活力です
 わたしはアメリカの大学で学んだのですが、アメリカはまさにダイバーシティの国。バックグラウンドもまったく違う人たちが一緒に暮し働くためにさまざまなルールを設定し、コミュニケーションをとることが徹底されています。それぞれの考えること、思うことは、伝えなければ他人にはわからない。言わなくてもわかるでしょ、と日本人は思いがちですが、無言のコミュニケーションはもう家庭内でさえ通用しない、ということに気づいている方も多いのではないかと思います。
日々のごはんづくりにはいろいろな作業が派生します。買い物・献立作り・料理の中での様々な作業・片付け。一連の作業を、時間の流れ・作業の流れが見えるフローに落とし込むことで、家族にもシェアしやすくなるのでは、と考えています。
そして、そのとっかかりのひとつに、時短料理があります。とかく曖昧に感覚的になりがちな台所仕事を、時間と作業の段取りを基準にして並べ直し、シェアしやすくします。そして家庭内でいろいろなことをシェアして動く習慣がついた子どもはいずれ、社会でもひととコミュニケーションをとりながら共通ルールを作り、動き働くことができるようになるのではないかな、と大きな期待をしています。それがダイバーシティに満ちた社会に対応していく生活力になるのではないかと思うのは望み過ぎでしょうか。

 

*次回から、時短料理の具体的なスキルをご紹介していきます。

田内しょうこ