ダイバーシティ2.0を読み解き、自己成長に繋げようVOL.4

社員が満たされれば企業は伸びる
~好循環を生み出す
 向洋電機土木の社員重視の施策とは?
電気設備設計、施工を手掛ける向洋電機土木株式会社は、社員数37名という小規模な企業でありながら、平成30年の「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞、同年、「健康経営優良法人(中小企業部門)」、「横浜型地域貢献企業」として認定されるほか、多方面から注目されています。また、平成20年から平成29年までの9年間で売り上げを倍増させるなど、企業としての業績も着実に伸ばしています。
その躍進の秘密を向洋電機土木株式会社、CHOであり、広報部部長の横澤昌典さんに伺いました。(敬称略)
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――社員重視の経営に力を入れているそうですが、具体的にどのような施策をしているのでしょうか。
横澤:
ワークライフバランスを推進しています。
休暇制度を整えるだけでなく、社員のスキルを向上させるためにIT研修などを取り入れるなど、さまざまなアプローチをしました。その結果、残業時間が減り、プライベートな時間の充実や安心感が生まれ、社員は気持ちの上でも満たされていきます。それにより、生産性が向上し、結果的にお客様の満足にもつながっていくのです。一見すると社員のための施策に感じますが、結果的に会社の業績向上につながっていきます。つまり、社員を大切にすることは、経営戦略でもあるのです。
――なぜ、社員重視の経営をすることになったのでしょうか。
横澤:
私自身、もともと大手企業の社員でした。父が体調を崩し、介護休暇の申請をすることにしたのですが、なかなか介護休暇が取れないのです。就業規則に明記されているにもかかわらず、前例がないとか、よくわからないとか。
そこで、向洋電機土木に転職することに。私の事情を理解してくれた弊社の社長から、「うちの社員が介護や子育てで困ることがないように、制度を整備してほしい」と言われました。入社して間がない人間が声をあげても説得力がありませんから、社長の援護があったことで進めることができた施策だと思います。
――休暇制度とは、介護休暇や出産・育児休暇ですか?
横澤:
病気休業なども含めて、必要な人が必要な休暇をとることができる制度です。ただし、これは制度だけの問題ではありません。制度があっても休暇が取りにくいという社内風土では、利用をすることができないでしょう。私が休んだら業務に支障が出てしまうことがわかっていたら、休暇は取りにくいと感じるはずです。そこで、私が休んでも困らないように部下を指導し、育てることにも力を入れています。
向洋電機土木に入社してから、私自身が病気にかかり、何度も入院をしました。今も月1回の通院が必要です。しかし、休暇制度があり、社内風土も整っているため、遠慮なく入院や通院ができています。
病気も介護も出産・育児も日常の中に当たり前にあることであって、特別なことではありません。だから、そのために必要な休暇を取得することも特別なことではないと考えています。
――人材の育成も大切ということですね。
横澤:
「ジンザイ」には、4種類あると思っています。
「人罪」は、いるだけで会社にとって有害な人。有害ではないけど利益にもならない「人在」。そして、会社にとって人的材料である「人材」。会社にとって財産になるのは「人財」です。
中小企業の場合、一人ひとりのちからが、そのまま企業の力になってきます。中小企業だからこそ「人材」、そして財産である「人財」を育てていくことが必要です。
仕事を教えることは、教える側にとっても、教えられる側にとっても、楽なことではありません。教える側にとっては、自分で処理してしまったほうが早いことが多々あります。しかし、教え、育てていくことで部下は成長しますし、職場の風土も整っていくのです。
そうして、働きやすい職場に変わっていきました。
――その他には、ありますか?
横澤:
積極的にテレワークを導入しています。
もし、足のケガをして、通勤ができない場合、テレワークを使って在宅勤務をすることができます。文章を書いたり、企画を作るような仕事であれば、足にケガをしていても仕事をすることは可能でしょう。傷病休暇を取得した場合、給与は6割の支給ですが、テレワークで仕事をしていれば、勤務したことになりますから、給与は満額支給されます。介護や出産・育児も同様です。
ケガをしていても、強制的に勤務をさせるという意味ではありません。休暇をとってしっかり休むか、仕事をするかという選択を自分でできるのです。
――テレワークを導入すれば、在宅勤務が可能ですね。
横澤:
テレワークは、在宅勤務をするためのシステムというイメージが強いのですが、弊社では、サテライトオフィスとしても活用しています。
今までは、現場の業務が終わると、現場事務所から本社に戻って事務作業をする必要がありました。現場事務所にテレワークを導入したことによって、すべての業務が現場で済ませることが可能に。そうすると社員は、現場事務所からの直帰ができるわけです。社員にとって時間的な負担が軽減しますし、会社にとっても移動コストの節約になります。
――働き方改革の推進に伴い、社内の制度の在り方を考えている企業も多いと思います。アドバイスはありますか?
横澤:
制度の整備も大切ですが、同僚や部下と信頼関係を持って仕事をすること。そして、発生主義ではなく、予想主義であることが必要です。特に、家族の介護や自分の病気は、いつ、誰の身に起こるのかは予想がつきません。誰かが困ってから慌てないように準備をしておきましょう。新しいことを取り入れる時は、反対意見があるかもしれません。しかし、会社全体を俯瞰して考えれば何が必要なのか、自ずと答えは見えてくると思います。
――ありがとうございました。