訪問レポート 健康経営 元気!つくってますVOL.7

芳野病院
総務課課長・WLB&ダイバーシティ推進室室長
小川美里
さん

もっと親しまれ
もっと活用される病院へ
チャレンジを続けます
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小川美里さん
 1913 (大正2)年、北九州市若松区に設立した医療法人寿芳会芳野病院では、医療・介護を通じて地域に根ざしたさまざまな活動を行っています。2004年、福岡県子育て応援宣言に登録後、2009年にはWLB(ワークライフバランス)へ向けた取り組みを実施。さらに2010年には、ダイバーシティの推進をスタートさせ、活躍できる職場づくりを行っています。今回は、このような職場づくりの推進に大きな役割を果たしている総務課課長・WLB&ダイバーシティ推進室室長の小川美里さんにお話を伺いました。(→登録会員の方は「渥美がいく!医療法人寿芳会 芳野病院」編をあわせてお読みください)
WLBで注目の病院に。やりがいを感じています!
――WLBを実現し、健康のシンボルとなる……。病院のイメージを大きく変えてこられたと感じています。小川さんの主な仕事はどんなことでしょうか。
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小川美里さんの講演風景
小川  芳野病院は早くから育児休業の取得や短時間勤務制度の導入、連続休暇の取得を奨励していますので、働きやすく、能力を活かせる環境にあります。また、仲間との雑談からでてくる思いつきのようなことでも、よいアイデアであればすぐに取り上げて実現できるため、とてもやりがいのある環境にあります。
 そんな雰囲気の職場で、私はプライベートと仕事のバランスが上手にとれる場であること、性別や世代、価値観などを超えて活躍できる場であることをさらに推進するための活動を日々行っています。
 主な仕事内容としては、大きく分けて3つあります。1つ目は法改正や他社事例などの情報収集を県内外、時には海外より行い、院内で提案をしていくことです。2つ目は職場内でのWLBに関する相談窓口として、スタッフからの職場復帰に関する相談をともに考えてその方に必要な情報が提供できるようつとめています。そして3つ目は対外的な活動で、WLBの取り組みや、ダイバーシティなどに関する講演活動を通して地域で啓発を行うことです。

WLBの推進は、周囲をどう巻き込むかがポイント
――先程の3つの仕事内容について詳しく教えて頂けますか。
小川 はい。まず、1つ目の院内での提案についてですが、職場環境や労務に関する法改正が改正・新設されたりした際に、それらについて情報収集を行ない必要に応じて院内 へ提案します。2つ目の相談窓口としては、主に休業前や職場復帰時のオリエンテーションで対象となる方のお話を伺ったり、必要に応じて情報提供を行なったりしています。意識して伝えていることは“周囲の協力と理解を得る”、つまり家族やパートナー、職場仲間など周りをどう巻き込むかが大きなポイントとなることです。面談では、厚生労働省より発刊されているイクメン冊子などを使って、パートナーと自分の1日のタイムスケジュールを可視化頂くこともあります。お互いの1日の過ごし方を一緒に見ることで、協力し合えるところを確認することで協力体制も変わってきます。最後に3つ目の地域での活動では、企業間のネットワークに参加したり、企業や地域などでWLBに関する講演をさせて頂いたりしています。ある学校で開催されたPTAの父母教室では、「男性は家へ、女性は社会へというように、お互いの立場を交換してみてください」とお話しさせて頂いたこともあります。それぞれの立場で考えることによって「自分だけの力ではどうしようもないことがある」ことに気付きます。そうすると相手を思いやる気持ちや理解する気持ちが生まれ、協力へ向けた歩み寄りに繋がるようです。お話しさせて頂くことで私自身も気付くことが多く、貴重な学びとなっています。

オープンホスピタルで、より地域に根ざした病院
――歴史ある病院として地域から信頼され続けてこられました。その努力は格別のものがあると思います。
小川 病院選びは、命にかかわる大切なことですので、できれば病院を見学したり、情報を集めたりして決めることはとても大切ではないでしょうか。芳野病院では、受付やリハビリセンターなどをオープンにし、楽しみながら病院を理解し見学していただけるように、クイズを交えた見学会を行ったり、入院食を実際に食べていただいたりしています。
 そのほかにも、さまざまな活動を行っていますが、そのなかのいくつかをご紹介しますと……市民センターや企業などで年4回開催する「粋生き健康塾」では、病気になる前に予防する、健康維持のための講演を薬剤師や栄養師、看護師などが行っています。これは、平成15年よりずっと継続しており、延べ約8000人を超える方が参加されています。
 また夏休みに地域や職員の子どもを招いて行う「キッズサマースクール」では、子どもたちに病院のお仕事体験などをしてもらってとても盛り上がります。スタッフの子どもも参加しており親の働く姿から親子の絆が深まったり親自身もソワソワしたりと、微笑ましいイベントになっています。

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「キッズサマースクール」に参加した子どもたちと
 また1999年フランスの医療現場で始まった地域の高齢者を招く昼食交流会「隣人会」があります。これを私たちも取り入れたところ、年々参加者が増えています。「隣人会」によって、さらにイキイキとした高齢者の笑顔が見られることはスタッフにとっても、大きな喜びになっています。
 「隣人会」を始めた翌年には開院100周年の記念事業の一環で、海外支援への協力としてザンビアへ、丈夫なアルミ製の杖を寄贈したこともありました。ザンビアからお礼の写真が届き、そこに芳野病院の名札つきの杖を使っていらっしゃる方々の姿を見たときは、言葉にはできない喜びがありました。

「仕事人、家庭人、地域人」として、できる事をできる時に
――たくさんの気づきを得られ、次のステップとして考えていらっしゃることを教えてください。
小川 渥美由喜さんがよく「仕事人、家庭人、地域人」の役割がある、とおっしゃっていますが、私もおっしゃる通りだと実感しています。仕事の課題は職場で、家庭の課題は家庭で解決すると思いますが、地域の課題も同じように国や行政に頼ってばかりではなく、そこに住まう人たちが「できる事」を「できる時」にしていくことが大切なのではと考えています。
 今、地元が大好きな仲間たちとともに「若松ひとまちラボラトリー」という、地元若松の魅力を発信する活動を行なっています。緑豊かな景観や美味しい食材、あたたかい人、若松にあるそういった魅力を体験しながら感じていただけるようなイベントを年に数回開催しています。特に今力を入れているのが、北九州にゆかりのあるアーティストとコラボした「北九州“星の手箱”プロジェクト」で、魅力を形にしてPRしながら、その売上金の一部で北九州の未来を担う若者・子どもを支援できる仕組みづくりを行なっているところです。いずれにしても、次世代へのバトンをしっかりと繋いでいきたいなあと考えています。
 仕事の面では、病院がもっと活用されるといいなと思います。健診などの予防もそうですが、病気になる前に情報を得ていただいたり。プライベートではアロマテラピーや香りを学んでいますので、継続していきたいと思います。職場にしても地域にしても、上司や仲間に恵まれていますのでとても楽しくさせて頂いていますが、まだまだ自分にできることはあるのではないか、興味のあることにどんどんチャレンジしていきたい、と思っています。
構成/後藤鈴子+編集部