VOL.6
鳳自動車株式会社 吉澤幸子さん
ただいま151人家族
親心で全員の健康にとことん心を配ります
親心で全員の健康にとことん心を配ります
もくじ
東京は葛飾区のタクシー会社「鳳自動車」様。
10年をかけて「健診・保健指導受診率100%」を達成。
その立役者の常任顧問・吉澤幸子さんは「社員の健康を思えばあたりまえのこと」とごく控えめ。
とはいっても100%とは容易なことではありません。
ラジオ番組や各種セミナーなどで、社員の健康づくりの取り組みについて話されることも多い吉澤さんに、「鳳自動車、全員の健康づくり」の秘訣についてうかがいました。
10年をかけて「健診・保健指導受診率100%」を達成。
その立役者の常任顧問・吉澤幸子さんは「社員の健康を思えばあたりまえのこと」とごく控えめ。
とはいっても100%とは容易なことではありません。
ラジオ番組や各種セミナーなどで、社員の健康づくりの取り組みについて話されることも多い吉澤さんに、「鳳自動車、全員の健康づくり」の秘訣についてうかがいました。
さりげない声かけから
しだいにボリュームを上げて100%受診へ
しだいにボリュームを上げて100%受診へ
――ラジオ番組のご出演や各種セミナーなどに登壇しお話しされています。そのお話がとてもわかりやすいという評判ですね。
吉澤 それを聞いてホッとしました。健保関連の話はともすれば言葉の使い方が“かたい”ので、自分の言葉で伝えようということを心がけています。でもお聞きのとおり私の伝えたいことは難しいことではありません。健康の大切さ、その健康を維持して元気に働くために定期的に健診を受け、その結果を受け止めしっかりと対策をとる。こわい病気や大きな病気は早期発見、早期治療でいい方向に向かうことはすでに多くの方が知っていらっしゃると思いますから。
――こうしてお話をうかがっていると「健康経営」という言葉より、「社員思いの健康づくり」のほうがぴったりと感じます。
ところで受診率100%の健診、保健指導はどのような形で実施されているのでしょうか。
ところで受診率100%の健診、保健指導はどのような形で実施されているのでしょうか。
吉澤 タクシー業は深夜業務ですから労働安全衛生のルールで年2回の健診が義務付けられています。それに従い当社では巡回健診を年に2回実施しています。
夜勤明けの社員が必ず受けられる仕組みにして健診日は2日間。健診日が決まると数か月前から周知を徹底します。管理者全員で「今度はいついつよ!」と耳にたこができてもかまわないくらいのしつこさで伝えます(笑)。
それでも受けられなかった社員がいれば次の一手として名指し!の手配書(?)のような告知のチラシを張り出します。誰々さん健診を受けてくださいね。という言葉を添えるので会社中に知れ渡ってしまうのですけどね、それが効果的です(笑)。
夜勤明けの社員が必ず受けられる仕組みにして健診日は2日間。健診日が決まると数か月前から周知を徹底します。管理者全員で「今度はいついつよ!」と耳にたこができてもかまわないくらいのしつこさで伝えます(笑)。
それでも受けられなかった社員がいれば次の一手として名指し!の手配書(?)のような告知のチラシを張り出します。誰々さん健診を受けてくださいね。という言葉を添えるので会社中に知れ渡ってしまうのですけどね、それが効果的です(笑)。
――最初はさりげない声かけから始まり、しだいに声が大きくなるわけですね。
絶対に受けてくださいという会社の強い意志を感じます。
絶対に受けてくださいという会社の強い意志を感じます。
吉澤 健診が終了すると全社員に受診者数と要精密検査の内訳と人数を報告します。これを毎年繰り返し、およそ10年で受診率100%に到達しました。
――吉澤さんの社員の方に対する熱意の成果なのですね。
きっかけは20年以上前のこと――
早期発見の重要性を痛感した出来事
早期発見の重要性を痛感した出来事
――吉澤さんが今のように社員の皆さんの健康について徹底した取り組みを始めたのは20年以上前の出来事がきっかけだそうですが。
吉澤 その頃は社員の平均年齢が低かったこともあり、ほとんどの社員が自分は大丈夫と、健康について過信していたと思います。そんななか、健診の結果が悪かったのにお医者様にかからず、そのあとの健診で大きな病気が見つかった社員がいたのです。その社員の将来や家族のことを思い、私もとてもショックを受けました。その時、手術を受けて完治して戻ってくるよう、会社は待つからと伝えたことを覚えています。
幸いなことにその社員は無事に手術して、転移もなく1年ほどで職場復帰でき、定年後も70歳まで働いてくれました。今にして思えば早期発見だったんですね。
その時、社員の健康のためにいちばん重要なのはまず、健診、それによる早期発見、早期治療なのだと痛感したのです。
その後その社員がすっかり元気になってから社内研修会などで経験談を語ってもらい、健診の重要性のアピールに努めました。病気の話は重いものですが同じ仲間の体験であり、完治した人の話なので非常に説得力がありました。
健診の必要に多くの社員が気付き、当社の社員が健康に対して意識が高くなってくれたのは、体験談も一助になっていると思っています。あの時から20数年の月日を経て、健診で大きな病気が見つかった人は何人かいますが、幸いにもみな元気に職場復帰しています。
幸いなことにその社員は無事に手術して、転移もなく1年ほどで職場復帰でき、定年後も70歳まで働いてくれました。今にして思えば早期発見だったんですね。
その時、社員の健康のためにいちばん重要なのはまず、健診、それによる早期発見、早期治療なのだと痛感したのです。
その後その社員がすっかり元気になってから社内研修会などで経験談を語ってもらい、健診の重要性のアピールに努めました。病気の話は重いものですが同じ仲間の体験であり、完治した人の話なので非常に説得力がありました。
健診の必要に多くの社員が気付き、当社の社員が健康に対して意識が高くなってくれたのは、体験談も一助になっていると思っています。あの時から20数年の月日を経て、健診で大きな病気が見つかった人は何人かいますが、幸いにもみな元気に職場復帰しています。
――「会社は待っている」という言葉にも力を得て病に勝てたのではないでしょうか……。感動的なお話ですね。
「ご飯はなるべくゆっくり食べてくださいね」
大切なのは思いやりときめの細かいコミュニケーション
大切なのは思いやりときめの細かいコミュニケーション
――会社経営でもっとも大切にしているのが従業員全員の健康づくり。100%に達した健診の受診を始まりとして、その結果、特定保健指導の対象者になったら必ず特定保健指導を受けてもらうことも徹底させて、こちらも100%を達成されました。
吉澤 特定保健指導とは健診の結果、メタボなどのリスクがある方に生活改善のアドバイスをしてくれるという仕組みです。保健師や管理栄養士の方が生活スタイルに合った指導をしてくれますから、しっかり活用するように周知させています。予防医療としてとても大切ですから。また、日ごろから、それぞれの健康状態や生活スタイルを私なりに情報を得て、個人的に声をかけたりしています。
――駅からこちらまで、鳳自動車のタクシーにお世話になりました。若いドライバーさんで入社10年、他の業界も会社も知らないと言っていらっしゃいました。
吉澤 その彼には、朝ごはんはしっかり食べてくださいね、と言っているんですよ。タクシードライバーは食事が不規則だからそれが心配。ついつい早食いになるし、忙しくても食事はできるだけゆっくり摂るようにと声をかけるようにしています。
――このお仕事ならではの健康課題がありますね。吉澤さんは、社員の方全員の生活スタイルや健康について把握されているのですね。
吉澤 社員はみんな大切な家族と思っています。家族の健康を願うのはあたりまえですものね。病気をしたら、その本人だけでなく家族の方の不安や心労も伴います。心身ともに元気に働いてほしい。それがいちばんの願い。そのためにうるさいな~と思われるのを承知でコミュニケーションをとります。それも大事な社員に対する思いやりだと思っています。
勤続年数は同業全国平均の1.5倍
元気に働き続ける人の会社です
元気に働き続ける人の会社です
――母心、親心を隠さず、にこやかにお話ししてくださるから、皆さんの気持ちに届くのではないでしょうか。こんなに社員思いの会社はさぞかし居心地がよいはずと思ったら、その通りで、社員の離職率が低く、平均勤続年数は16,5年。
吉澤 はい、これは同業全国平均の1,5倍以上という数字です。
勤続30年、40年という方も多いですね。平均年齢は60歳ですから。これも当社の誇りです。
勤続30年、40年という方も多いですね。平均年齢は60歳ですから。これも当社の誇りです。
――社員はみんな家族という吉澤さんの言葉を裏付けるお話だと思います。
健康づくりについて、これからの課題としていることはありますか?
健康づくりについて、これからの課題としていることはありますか?
吉澤 メンタルヘルスですね。心の問題は健診ではわかりにくいのでなお心配です。それこそ、日ごろからのコミュニケーションがいっそう重要だと思います。うるさがられると思いますけれど(笑)。
【インタビューを終えて】
大事な社員は大事な家族。時間に追われるドライバーさんに「ご飯はできるだけゆっくり摂ってください」と言えるのはやはり親心から生まれる言葉でしょう。吉澤さんは、仕事を離れると茶道、陶芸、お琴や三味線もたしなみ、クラシック音楽がお好きと、多彩な趣味をお持ちだそうです。その感性が柔らかな佇まいの源と感じました。とても温かい気持ちになれた鳳自動車様、吉澤幸子さんのお話しでした。(構成/山崎陽子+編集部)