訪問レポート 健康経営 元気!つくってますVOL.12

脱モノカルチャー! ただ今、男性活躍推進中!
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株式会社 生活の木
代表取締役 C.E.O

重永 忠さん

「ひとりひとり「やりがい」が違っていい。
自分ごととして働き、幸せになる――
それが『志事』です」
 先代から受け継いだ陶器の製造販売会社をハーブとアロマテラピー事業に移行し、東京・原宿の表参道からスタートした「生活の木」。創業以来40年、ハーブ・アロマテラピーのリーディング・カンパニーとして原材料の調達、開発、製造、流通まですべてを自社で行う「オール自前主義」を貫き、全国に120の直営店、90の提携店、カルチャースクール、スリランカではアーユルヴェーダを行うネイチャーリゾートホテルも、と進化し発展を続けています。
 経営方針は、「社員ひとりひとりがやりがいを持って自分ごととして働き、幸せになる」。社員満足度でも東日本1位(経営コンサルティング会社リンクアンドモチベーションによる2009年の調査より)となりました。
 その秘密を知りたいと、講演会や研修の依頼が引きも切らず……。代表取締役C.E.Oの重永忠さんに、元気いっぱいの会社経営のコツをうかがいました。
 生活の木ホームページ https://www.treeoflife.co.jp/

いつの間にか社員の9割が女性
ただ今、男性活躍推進中!
――いま、多くの会社でダイバーシティ推進室などが設置され、女性の活路をどのように見い出すかが問われていますが、生活の木は「とっくに女性活躍のお手本のような存在」という印象があります。
重永 あはは、「とっくに」ですか。確かに、思えば、不思議ですよね、性別を意識して採用してきたわけではないし、男女で給与に差もないし……仕事ができる人が昇進昇格しています。そもそも女性が活躍するための特別な会社を作ろうというスローガンを掲げたこともないんです。仕事に取り組む姿勢として、「好き」や「やりがい」「実感を伝える販売」などを大切にしてきましたから、ハーブやアロマテラピーが好きなお客様から社員になる方も多く、女性が多いのは自然な流れだったのだと思います。
――現在は770名の社員がいらっしゃるそうですね。
重永 そのうちの9割が女性ですが、いまは男性社員が増え始め、これからも増やしたいと考えています。
――生活の木の「男性活躍」には、なにかきっと、新しい視点が!? 
重永 と、言えるかもしれません。男性も、ハーブやアロマテラピーで「豊かな心で生活する」ということに興味を持つ人が増えてきているんです。香りは古来、男性が楽しんでいたものでもありましたからね。
 この本社フロアには、日本で第一号のアロマ調香師(アロマブレンダー)もいます。また、商品開発や商売にはひとつの性別だけで価値観を作り上げるのではなく、多様な価値観が必要だと実感することも多い。「男性活躍推進室」を作りたいくらいです。
――男性が増えてきたことでどんな変化がありましたか?
重永 まず、男性のお客さまが増えてきました。男性店員が店舗にいると、気軽に入りやすいんでしょうね。
 また、女性のお客さまを男性が接客することで、男性へのプレゼントの相談をお受けすることもできます。さらに、男性社員の発想から、エッセンシャルオイルのボトルを差し込むだけで使える、操作が簡単な、‟香り家電”(芳香機)といえるものを開発し商品化することができました。これ、とても好評なんですよ。
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――接客にも、商品開発にも、新しい展開をもたらしたのですね。
重永 「ひとつの性別だけで価値観をつくらない」ということは大切だと実感しますね。多様な価値観を持ち寄ることで、新しい化学反応が起こります。
 ですから性別の違いからなにかが生まれた、というだけではないと感じています。ひとりひとり個性も価値観も違いますから、その人が自分ごととして仕事をするかどうか、ということのほうが大切なんですね。
 数で言えば、我が社では男性はマイノリティであり、LGBTの方は社会的に見てマイノリティかもしれませんが、私たちは採用の際にそういう観点で見てはいないのです。
――自分を開放して自分を発揮するときに、新しいものが生まれるということですね。それがきっとダイバーシティの原点であり結実でもあるのでしょうね。

「会社は何のためにあるのか」
問い続け、その答えを
実現するために必要な4つのこと 
――これまでに「働きたい会社・・・」にも選ばれ、数多く表彰を受けてこられましたが、重永さんが大切にしてこられたことは?
重永 私が会社を経営する上で常に考えて来たのは「会社は何のためにあるのだろう」ということでした。私がいきついた答えは、
 「社員が幸せになる場所」
 「好きなことで人に尽くして、自分も家族も幸せになる場所」
 「自分たちの仕事が世の中の役に立っていると実感する場所」
 「この仲間たちとここにいることができてよかったと実感できる場所」
ということでした。もちろん、お客さまが幸せになることは大切ですが、働く人たちが幸せにならなければ意味がない。そう思うのです。
――会社で「やりがい」を感じ、「生きがい」にもなるように。そのためには働く人たちを豊かにする場でなくてはならない、ということですね。日本中が、世界中がそうなるといいなあ、と思います。
重永 そう! ぼくが言う働く人とは、社員だけでなく、商品や会社に関わった人たち全てです。外注先、取引先……。会社をとりまく、この仕事にかかわるステークホルダー全ての人々が幸せになって、事業が繰り広げられていくことが理想です。もちろん、今こうして取材をしてくださるみなさんにも幸せになってもらいたい(笑)。
 海外51か国の原材料の産地でも、安い賃金で働いてもらおうとは思いません。「コミュニティトレード」と呼んで農家の人たちの生活を大切にしています。また、福祉の分野でも、福祉をきちんとしたビジネスに高め、社会参加を進める「ウェルフェアトレード」という活動にも力を入れています。
――社会でさまざまな言葉が生まれる前から、新しい視点の取り組みをして、そこから新しい言葉を創ってこられましたね。
重永 「社会的責任投資」という言葉も最近ではよく言われるようになりましたが、私たちは、それを本業で実現していきたい。時間をかけ、手間ひまをかけ、ぐっとこらえて我慢をしながらやっていると、それができるようになります。
 ビジネスにはロマンがなければダメ。うちの仕事で言えば、世界とつながってハーブを紹介したいという「ロマン」です。そのためにはうまくいかないときにも「我慢」がいる。しかも一朝一夕じゃできないから「時間」がかかる。
 「ロマン」と「我慢」と「時間」をかけると、誰にでも「自慢」できることが実現できるのです。
 これは私のオリジナルの理念ですから©マークをつけておいてくださいね(笑)。
――はい(笑)。そうして本業に取り組みながら、働きがい、生きがいを自ら創っていくのですね。
重永 本業が広がっていくほど、社員770人も幸せになる。会社に関わったたくさんの人たちが豊かになっていく。会社というのは、社員が人生の大半を費やす時間を預かっています。その時間、やりがいを持って過ごせるかどうかがひとりひとりの社員の人生に影響を与えるわけです。自分の好きなことに人生を賭け、その結果、いい影響を人や社会に与えられていると実感できれば、素敵ですよね。
 入社前の会社説明会や面接、社員研修などから、私自身が直接すべての社員にこうした思いを伝え続けています。
――ひとりひとりの育成にトップが自らコミットして、理念を伝え、それぞれのよさを発揮してもらう環境を作っていらっしゃる。今あえて「ダイバーシティ」と名付ける必要はないのかもしれませんね。
重永 みんな、やりがいを感じてこの会社に入ってくれて、自らのやりがいを志しとして、「志事(しごと)」として一生懸命取り組んでくれます。
 ひとりひとり、「やりがい」は同じではなく、違っていいんです。違うからこそ楽しいし面白い。ひとりひとりが違うことこそが価値だと感じます。ダイバーシティってそもそも、そういうことじゃないでしょうか。ひとりひとりの物語を大切に、これからも邁進していきたいと思います。

生活の木ホームページ https://www.treeoflife.co.jp/

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今月の「元気!つくってます」を読んで

国連発表の2030アジェンダ
「誰ひとりも 取り残さない社会をめざして」
生活の木には、そのお手本があります!

株式会社堀場製作所
野崎治子さんから

 記事を拝読して、ワクワクしました。なんと素晴らしい志をお持ちの会社だろう、と・・・・・・。
「誰ひとりも 取り残さない社会をめざして」
 国連は、2016年に持続可能な開発目標「SDGs」を発表しました。企業やNGOも一緒になって世界から飢餓や貧困を撲滅しようという活動で、2030年のゴールは2030アジェンダと呼ばれています。
国連広報センター2030アジェンダ のページ
アジェンダを読むと、今の日本に住む自分たちには関係ないとか、壮大な構想で自分には無理だと思いがちですが、御社の活動はまさにお手本です。
日々の仕事がグローバルにつながり、世界の人々を幸せにするって素晴らしいですよね。
「まずは自分自身が幸せになること」
 当社の創業者に、管理職の要件についてコメントを求めた際に、「自分が幸せになること」と即答してくれました。ただし、自分一人だけが幸せというのはあり得ない。皆とともに幸せになれるよう頑張れと檄を飛ばされたことを懐かしく思い出します。
確かに、自分自身を幸せにできずして、人を幸せにすることはできませんから。
「一人ひとりが輝くこと」
 ダイバーシティはジェンダーだけの問題ではありません。世代、地域、文化・国籍・宗教、雇用形態など、課題は山積です。
けれど 「天は二物を与えず」といいます。逆説的かもしれませんが、人には必ず一つ良いところがあるということです。さまざまな制約をのりこえて、与えられた天賦の才を磨きつづけることが、生きるということなのだと改めて気づかせていただきました。
また京都の「生活の木」さまのショップにうかがいます。ありがとうござました!!
野崎 治子
(のざき・はるこ)
株式会社堀場製作所 理事 管理本部CSR 担当 HORIBA COLLEGE 学長
1955 年生まれ。京都大学薬学部卒業。
1978 年福利厚生子会社ホリバコミュニティ入社、1980 年堀場製作所に転籍。
人事課、経理課を経て、2001 年人事教育部部長、2008 年より管理本部人事担当副本部長。2014 年4 月より現職。